映画「ムーラン」(2020)感想・考察:ムーランかっこいい!けどディズニーでやる意味は無いのでは?
今回は、実写版の「ムーラン」についてお話していこうと思います。
当初は劇場公開される予定でしたが幾度も延期を繰り返し、最終的には2020年9月4日に「Disney+(ディズニープラス)」にてプレミア配信されました。
制作中の間から事あるごとにブーイングを受け、公開時も様々な界隈から批判が殺到している何とも可哀そうな映画です。キャストとスタッフのことを考えるといたたまれない気分になります……こんなにも不憫な映画、他にあるんでしょうか?笑
12月4日には見放題枠で配信スタートしたので、これを機に鑑賞してみました。
概要
原題/邦題:Mulan/ムーラン
公開日:2020年9月4日
上映時間:115分
あらすじ
中国はボーリー・カーン率いる軍隊に攻め入られ、いくつもの国を陥落させられていた。都を守るために皇帝は、一家から一人男を招集し、最強の軍隊を作り上げろと命令した。
主人公・ファ・ムーランの家には息子はいなく男は父親のズーのみだった。命令に従いズーは招集状を受け取るが、身体は大分弱っていた。
ムーランは愛する家族を守るため、男に扮して兵士に交じり、戦いに挑むーー。
スタッフ
監督: ニキ・カーロ
脚本:エリザベス・マーティン、ローレン・ハイネック、リック・ジャッファ、アマンダ・シルヴァー
今作では、ニキ・カーロという女性の監督がメガホンをとっています。
そして、「ジュラシックワールド」の脚本リック・ジャッファ、アマンダ・シルヴァー
が再びコンビを組んでいます。
キャスト
ムーラン:リウ・イーフェイ/明日海りお
タン司令官:ドニー・イェン/井上和彦
ホンフイ:ヨソン・アン/細谷佳正
ボーリー・カーン:ジェイソン・スコット・リー/咲野俊介
実写版ではアジア系の俳優で固めているようですね(海外の俳優について本当詳しくないので薄っぺらいことしか言えませんが……)
日本語吹替版のムーランは、宝塚歌劇団出身の女優、明日海りおさんが担当されています。歌唱力が素晴らしいですね。
感想・考察
「ディズニーのムーラン」というより「木蘭」を題材にした映画
ムーランを見終わってまず思ったのが、「これディズニーでやらなくでやらなくてよくね?」
ディズニーのムーランは中国で語り継がれている物語上の女性主人公をモチーフに描かれた作品ですよね。実写版ムーランも、家族のために戦う女戦士が主人公です。
なので「木蘭の実写映画」とは呼べますが、「ディズニーのムーランの実写映画」とは呼べないと思います。
だってアニメ要素全然無いんですもの。個人的にアニメ版ムーランのサブキャラが大好きなのですが、実写版ではムーシューもクリキーもリーシャンもシャンユーも出てきませんからね。
なのに何故かヤオ、ポー、リンだけ登場するのが不思議で笑っちゃうんですけどねぇ。といっても彼らは名前が与えられたモブキャラに過ぎない活躍でしたが……
ディズニーから名曲「リフレクション」を借りただけでは?と思ってしまいます笑
強き美しきムーラン
この映画の最大であり唯一(?)の魅力は、ムーランかっこいいね強いねってところではないでしょうか。
小さい時から木の棒をぶんぶん振り回し、成長しても周りは構わず鶏を追いかけまわすようなやんちゃ少女です。
周りからは変人扱いされ、親族からも手に負えない娘扱いされてますが、お見合いの時にギャーギャー喚いてめちゃくちゃにしたのは妹とオバハンやんけ……と思ってしまいました。
クモが苦手な妹が騒がないよう急須で隠してあげ、宙を舞う急須と茶器を見事キャッチしてるムーランの方が偉いですよね。
兵士に紛れて訓練に励む際も、男子顔負けの身体能力を見せ隊長からも一目置かれます。
ラストのボーリー・カーンとのアクションシーンも見事でした。
結局魔女は何がしたかったんだ
実写版オリジナルキャラクターのシェンニャン。彼女はハヤブサに化けたりと特殊な力が使える魔女です。
ボーリー・カーン側についてるようですが反抗的な部分も見せているので、100%敵の味方ではないんだろうなぁとぼんやり思っていました。
敵陣との決戦の日にシェンニャンはムーランの前に颯爽と現れ、彼女の嘘を見破ります。
そしてムーランに「嘘がお前を弱くする」と言い残し去って行きます。
シェンニャンの言葉を真に受けたのか何なのか、ムーランはあっさり正体をばらし自爆します。そりゃそうですよね。
追放され一人涙を流すムーランのところに現れて「私が国を追い出された時も少女だった」と自分語りを始めますが、ムーランに自爆させるよう仕向けといて何がしたかったんでしょうかね。彼女にも闇落ちしてほしかったんですかね。
最後はあっさりとボーリー・カーンを裏切って皇帝の所にまで案内し、更にはムーランを庇って死ぬというあっけない最期を迎えました。
予告では敵か味方か?みたいな紹介されてたと思いますが、本当に敵なのか味方なのかよく分からないまま終わってしまいました。
皇帝とボーリー・カーンの関係
皇帝とボーリー・カーンには因縁があるようで、敵陣が都に攻め込んできたと知った皇帝は「カーンにとどめを刺す」と言い自ら敵に立ち向かいます。
ですがまんまと捕まってしまうのですが、ボーリー・カーンは皇帝にこんな言葉を投げるんですね。
「俺の父の怨念を知れ」
「皇帝の子どもはどこだ?俺達の剣に刺されたんだ」(このセリフうろ覚え)
このセリフをまんま解釈すると
ボーリー・カーンの父→皇帝側に殺された
皇帝の子ども→ボーリー・カーン側に殺された
ということでいいんですかね?
だとしたらどっこいどっこいじゃないですか(恨みは消えないでしょうがね)
この展開あまりにも急だったんで、もう少し伏線が欲しかったなぁなんて思いました。
不死鳥の存在
ムーランを見守る象徴として描かれている不死鳥。
不死鳥が登場するシーンってこのあたりでしたよね。
・ムーランが家を出て軍隊の所に向かう
・シェンニャンに手裏剣?を投げられ気を失ったムーランが目覚める
・軍を追放されて泣いてるムーランとシェンニャンが語り掛けるシーン
・軍に戻ったムーランが都まで向かう
他にもあったと思いますが、忠義、勇気、真実、という3つの徳に関連する出来事があったときに現れてる印象があります。
ですがこの不死鳥も、なんだか存在感あるような無いような感じですよね……
最後に
作品としても消化不良な部分が残るムーラン。ディズニーでやる意味は無かったのでは?と思ってしまいました。
ディズニーという看板を背負ってやるなら、「美女と野獣」や「アラジン」のようなアニメのストーリーと近い内容がよかったですね。
実写版ムーシューとクリキー、見てみたかったなぁ……