「ジ・アート・オブ・リメンバー・ミー」から読み取る「リメンバー・ミー」の制作秘話
今回は作品のコンセプトアートが詰まった本、「ジ・アート・オブ・リメンバー・ミー」の内容について触れたいと思います。
素敵なアートだけではなく、「リメンバー・ミー」の制作秘話についても語られているので、これを知れば「リメンバー・ミー」がもっと面白くなること間違いなしです!
キャラクター
ミゲル
共同監督、脚本を務めたエイドリアン・モリーナ曰く、人は映画を見るときスクリーンに映った人物と自分を重ね合わせようとするそうです。
ミゲルのデザインを考案中、痩せたメキシコ人の少年がこちらを見て笑みを浮かべているイラストを目にしたとき、ミゲルを見た子供に「あれ、僕みたいな子の話だ。僕の物語は、こんな風に語られる価値があるんだ。僕の経験は、人に聞かせる価値があるんだ」と思ってもらえる場面が目に浮かんだとのことです。
確かにミゲルは黒髪に丸い瞳に細い体つきをしていて、元気に走り回っている姿はどんな町でも見かけそうな少年そのものです。
ミゲルを見た子どもに親近感を持ってもらえるキャラクター作りが心がけられていたんですね。
ヘクター
「リメンバー・ミー」の死後の世界に生きる人達は、人に思い出してもらうと特別なエネルギーに満ちて、骨と骨がしっかち繋ぎ合わさるという設定になっています。
ヘクターのことを現世で覚えているのは、ママココだけです。あまり思い出してもらえないヘクターは、他のガイコツと比べて骨と骨が少しスカスカになっています。
また、ヘクターのカタカタした動きは、操り人形を参考にしたそうです。
リヴェラ家の人々
生きているリヴェラ一家の人々は、魅力的かつ現実味がある人物像にするよう心掛けたそうです。
ミゲルの家は、母、父、お婆ちゃん、ひいひいお婆ちゃん、おじさん、おばさん、従妹……と大家族です。
ですが、皆さんの家族に一人はこの中の誰かがいるのではないでしょうか。
家族が多いという設定も、この映画を見た人の大半が自分の家族のことが思い浮かべられるようにするためなのかもしれませんね。
ダンテ
ミゲルが可愛がっている犬のダンテは、ショロイツクインツレ、通称シェロ犬と呼ばれるメキシコ生まれの犬種です。
古代では、シェロ犬は死者を死後の世界へと導いてくれると信じられていたそうです。
「リメンバー・ミー」では少し頼りない印象のダンテですが、、結果として死後の世界にやってきたミゲルの手助けをするガイドとしての役割を果たしています。
エルネスト・デラクルス
デラクルスの見た目は、映画スターの様な容貌かつ完璧なエンターテイナーにしたかったそうです。
そのため、メキシコの昔の大スターかた最近の歌手まで様々な人物を参考にし、今のデラクルスが完成しました。
また、観客やミゲルが心から信頼できるように、優しいおじいちゃんのような印象を与えるようにもしたとのことです。
ガイコツたち
死者の国で暮らすガイコツ達は、表情豊かでありながら骨っぽさを残したかったそうです。
そのために、以下の様な工夫が施されたそうです。
・眼窩の形は変える
・鼻、頬骨、頭蓋骨はカッチリと描く
・唇を作った
・口の線を左右に大きく広げた
顔のパーツごとに細かい演出があったんですね。
場所
サンタセシリア
ミゲルが生まれ育った町、サンタセシリア。
ここはあえて、死者の国とは正反対になるよう設計されたそうです。
例えば、建物の高さは低くこぢんまりとした街並みをしています。
何もかも対照的に作られていて、だからこそ死者の国のきらびやかさが一層引き立つんですね。
ちなみに、サンタセシリアという名前は、音楽の守護聖人の名前から付けられています。
死者の国
死者の国のデザインをどうするかアイデアを出し合っていく中で、ファンタジーに満ちて壮大なイメージがある一方で、見慣れたメキシコの村のような雰囲気も出したかった、と照明研究アーティストのエルネスト・ネメシオは語ります。
「リメンバー・ミー」の死者の世界はきらびやかな光に包まれていて一見現実離れした世界のように見えますが、一つ一つの建物や周りの物はリアルで、等身大の古き良き街並みを思わせます。
祭壇
今作のキーポイントとなる祭壇。
祭壇はスペイン語でオフレンダと呼ばれています。故人との思いを家族と共有し、心通わせる場所なんだそうです。
祭壇には個人が生前好きだった物に加え、香ばしい匂いを放つマリーゴールドが添えられます。
死者はこのマリーゴールドの香りに誘われて、家族の元に帰ってくると信じられているそうです。
だから「リメンバー・ミー」の現実世界と死者の国を結ぶ橋はマリーゴールドで出来ているんですね。
墓地
墓地と聞くと殺風景で少し不気味な印象を持たれるかもしれませんが、メキシコにとっての墓地は、思い出が眠る場所、悲しみから喜びを生み出す場所なんだそうです。
なので墓地の周りには色とりどりの花やキャンドルが添えられています。
もし何も飾られていない墓があれば、それを見つけた別の家族がきれいにしてあげて、どんな魂も忘れられないよう心配りをしてあげるらしいです。素敵な習慣ですね。
その他
最後の死
メキシコでは、人は三回死ぬと信じられています。一回目は通常の死。二回目は、埋葬されたとき。そして三回目は、その人のことを覚えている人間が皆死に、死者の記憶が生者の記憶から消えた時です。
最後の死という概念に影響を受け、スタッフ達はこれをストーリーに組み込もうと決めたとのことです。
囚われて
デラクルスの秘密を知り、深い洞穴に閉じ込められてしまったミゲルとヘクター。
ここでは高めのハイコントラスト、柔らかい空気感を出したかったそうです。
色とりどりの死者の世界と比べてこのシーンは色彩が少なく、上から差し込む光のコントラストが強く感じます。
また、背景がシンプルだからこそ、ミゲルとヘクターにより焦点が向かいやすくなり、
ココに捧げる歌
音楽と思い出が繋ぎ合わさるラストシーン。ここでスタッフ達は、ミゲルに家族の前で歌うことを予定していたそうです。
音楽と記憶についてリサーチした結果、音楽には記憶を呼び起こす力があり認知症の治療にも使われていることが判明しました。
そのことから、映画のあのラストシーンが完成したんですね。
最後に
いかがでしたでしょうか?
映画を作ったアニメーター達の思いを知ると、より一層映画が味わい深くなりますね。